「生成する絵画」 K美術館館長 越沼正
絵はどこから生まれてくるのか
そんな問を、白砂勝敏氏の不定形絵画群は呼び覚ます。
天啓、降りてきたひらめきを捕捉した絵画がある。
対して白砂勝敏氏の絵は、無意識の際(きわ)から来訪した微動する何かが、氏の筆先に伝わり、その微動に鋭敏に感応した筆先が、刻一刻と生動する航跡を紙面上に転写したものであると私は推測する。
芽生えた動きは生育し、成長し、そして止まる。
それぞれの無二のかたちは、どこか時間の生命態を想起させる。白砂勝敏氏は、自身の直感に従い、その顫動(せんどう)する描線に独特の彩色を添える。
作品タイトル
【キノウミタリュウ】
2013制作 水彩画 size A4
【向こう側に咲く花】
瞬きのような壱年が過ぎ
老いる以外に手に入れた物は何なのか
得体のしれない黒い箱をむやみに開けるような人生でも
明日へ繋がる選択が未来を積み重ねている事に気づくが
それでもやはり傾き続ける天秤に心惹かれる
向こう側に咲く花よ
許される事にどれ程の意味があるのか
いつだって予測不能な未来を切り開く力に魅力を感じ
目を凝らしても見えぬから ただ気を張って感じ取るしかなく
誰ともちがう己の時を刻む事が生きる事だと気づいた時
得体のしれない孤独と期待も受け入れた
そして、あの花はこちら側に咲いている事に気がついた
k.shirasuna
作品タイトル
【向こう側に咲く花】
2013制作 水彩画